「っ! 触るな……あ、」
パシンッと乾いた音と共に、由希の手は凌空の肩に触れる前に凌空の手によって叩き落とされてしまった。
自らの行動に我に返った凌空は、驚いた様に前にいる、傷付いた様に顔を歪めた由希を見て声を漏らす。
「ご、ごめん。嫌、だったよね…」
叩かれた手を引っ込め笑った由希の笑みは、上手く笑えた物ではなかった。
眉は寄り口元は引き攣り、無理に笑っているのは明白だった。
「っ…俺、今日はもう帰るから」
それが凌空にも分かったのか、俯きながら立ち上がり、
「えっ、ま、待って! り――…」
由希の制止に耳を貸すことはなく、由希の横を通り窓からベランダに出て向かいの部屋のベランダに飛び移って行ってしまう。
慌てて凌空の出て行った窓に向かった由希だったが、既に凌空は窓から自分の部屋へと入った後だった。