「でもまあ、今日の所はこれ位でいいか。もう俺も疲れちゃったし、また今度来るから。あ、でも多分俺が次に来た時は――…」


座っていた机から降り、マントを翻して由希と凌空に背を向け、


「ヴァンパイアになってると思うし。それに――"ヴァンパイアフィリア"に堪えられる人間なんている訳がない。じゃぁまた会おうね、桜木由希、荒川凌空」


月明かりを背に振り返った男は、ニヤリと赤い瞳を弧にし、口元からは凌空が生えていた鋭い牙と同じ牙がその存在を主張していた。

そしてその言葉を最後に、唖然としている由希達を残し、現れた時と同じ様音もなく一瞬で消えたのだった。

残された二人の間には、なんとも重苦しい空気が漂う。

由希は体を起こしそのままベッドに座り、床に俯いき座り込んでいる凌空に視線を向けた。