その時、首筋を舐めるだけだった凌空が舐めるのを止め、口を開き鋭い牙を覗かせ、そして――…
「い、いやあああ!! りく、凌空! ヤダッ、やめて…!」
激しく首を振り今まで以上に拒否反応を示し、恐怖のあまり目に涙を浮かべ凌空に助けを求める。
暴れる由希に、凌空は首筋に埋めていた顔を上げ、未だに何も映さない瞳で由希を見下ろすだけ。
「り、く。も、とに…っ、戻ってよぅ――」
ぼろぼろ涙が溢れる。
無表情な顔で見下ろしている凌空に、訴える様に見上げた。
何時もの凌空に戻って欲しくて、自分の知っている凌空がいなくなってしまうような気がした由希は、赤い瞳を見つめた。
「…ゆ………き」
「…え」
微かに聞こえた声に、由希は見つめていた赤い瞳から、凌空の顔全体に視線を向けた。
だが表情は先程と変わらず、無表情なままだ。