「り、く…?」


由希は、今自分の上にいる幼なじみを見つめる。

茶色だった髪は漆黒になり、虚ろな瞳は月の光で赤く妖しく輝きを放つ。

薄く開かれた口から覗くのは、恐ろしいまでに鋭く尖った二本の牙。

私の知っている幼なじみの凌空の姿とは程遠いその姿に、由希は激しく狼狽えた。


「ど、したの…? 凌空…」

「……」


ベッドに押し付けられた両腕を見た後、何時もに様にへらりと笑い凌空を見上げた由希だったが、由希の言葉に凌空が答える事はない。

無表情な顔で何も反応を示さない凌空に、由希はどんどん不安になる。浮かべていた笑みが徐々に消え、困惑した表情へと変わった。


「ね、ねぇ凌空っ。どうしたの? 具合悪いなら、ベッドで寝ていいよ?」

「……」


だから離して、と捕まれている腕に力を込めるが、凌空は何も反応せず腕を掴んだまま離そうとしない。

映る筈の凌空の瞳に由希は映ってはおらず、何も映さないその瞳に恐怖が沸き上がる。