「ねぇ荒川凌空、キミ今さ…喉が渇いて仕方ないんじゃない?」

「っ…喉、なんて…渇いてねぇ!」


男の言葉にビクリと肩を震わせ息を飲んだ後、まるで自分に言い聞かせるよう声を荒げた。

突然、男の言う通り凌空は喉が渇いて仕方なかった。だがそれは、水やジュースで潤う様な物ではない。

その事に凌空は激しく混乱していた。


「嘘なんて付かなくてもいいのにー。本当キミって、意地っ張りだね?」


「それじゃぁモテないぞ?」と場にそぐわないウインクを一つ、男がした。

由希は喉が渇いているならと、テーブルの上に置いてある飲みかけのジュースを取ろうと凌空の背から出ようとしたが、それは凌空の体で阻まれてしまい叶わない。

ジュースを飲んでも喉の渇きが潤う事がないと知らない由希は、眉を寄せ目の前にある大きな背中を見つめていた。


「喉、渇いてしょうがないんでしょ?」

「ぐっ、う、る…せぇっ…」

「我慢しなくてもいいんだよ?」

「お、俺は……っ」


男の甘い囁きに、凌空は激しく頭を振り否定する。