しかしそれを聞いた凌空は、ベッドから身を乗り出している由希の体を震える手で自らの背に隠そうと引っ張る。
顔を真っ青にして震える手で、それでも由希を守ろうとする凌空に、由希はどうして苦しい自分の事を気に掛けず、私の事を心配するんだ。
私の心配じゃなく、自分の事をもっと考えればいいのに。と、悲しくなる。
「あのさ、なんで俺が助けなきゃないの?」
「え…」
不思議そうにこてんと首を傾げるその男に、由希も首を傾げた。
「俺に荒川凌空を助ける義理なんてないんだけど。それに助けるメリットもなーんにもないし?」
楽しそうに話すその男に、由希は言葉を失う。
「それと、俺的には嬉しいことだしね。やっと第一段階に入ったわけだし?」
「……」
「でもまー俺的に、今ここで全部荒川凌空がクリアしてくれた方がさっさと帰れるから楽でいいんだけどね!」
「……」
「だからさぁー…」
唖然としているしかない由希と、未だ荒い息を吐いき苦しむ凌空に、男は足を組み替え、
そして…
「早くヴァンパイアに覚醒してくれないかな?」
それは悪魔の囁き――