「大体さ、見た人の名前が分かるなんて都合の良い話あるわけないでしょ。そんな奴いたら会ってみたいもんだよ」
「アンタが言ったんだろ?!」
やれやれと呆れた様に溜息を吐き出したその男に、ちょっとでも信じかけた自分に腹を立てる凌空が、殴り飛ばそうと拳を振り上げる程だった。
隣の由希はあからさまにガッカリした様に、ベッドの上に置かれているハートのクッションをいじり始める。
「とまぁ、随分話が逸れたけど、何か体に変化は起きた? 荒川凌空」
「変化あ? そんなもんねーけど…」
壁にかけられている時計を見た後、未だ不機嫌な様子の凌空を見つめた。
また訳の分からない事を言うその男に、凌空は顔を背けて答える。
「んー、オカシイなぁ。もう十二時も過ぎてるし、そろそろだと思うんだけど…」
腕を組み綺麗に整えられた眉を寄せるその男は、難しい顔をして天井を見上げている。
そんな姿に由希は、