「そうそう。人間に良い所なんてないんだから、桜木由希くらい素直じゃなきゃ。荒川凌空は頭が堅過ぎ、もっと柔軟に物事を考えたら?」

「なんでアンタにそんな事言われなきゃないんだよ?!」


やれやれと肩を竦める仕草をする男に、凌空は由希からアメ玉を取ろうとするのを止め、歯を剥き出す勢いで声を張る。


「それになあ! なんで俺達の名前知ってんだよ?!」

「そ、そういえば…!」


凌空の言葉に由希も驚き賛同する。


「ああ、俺の目は見た人の名前が浮き上がって分かるようになってるんだよ」


片目を閉じ、その閉じた片目を指差したその男を、


「んな!」

「ええ! 本当ですか?!」


あからさまに驚く凌空と、目を輝かせる由希が見上げた。

だが一変…


「うっそー!」


と、まるで子供がイタズラに成功したかの様な笑みを浮かべ、ポカンとする二人を見下ろしていた。