「あ、あ…」
美し過ぎるその男に、言い様のない恐怖を感じた。
会った事もない、知らない人物の筈が、由希の体はこの男に拒否反応を起こしている。
見開かれた瞳に映るのは、妖しく赤い瞳を細める男の姿。
震える体で後退ると、それにより寝っている凌空の体に当たり、突然訪れた軽い衝撃に凌空が目を覚ました。
「ああ゙ー、ねみぃ。由希、もう十二時なっ……由希?」
目を擦りながら起き上がった凌空は、自らに背を向けている由希の肩に手を置いた。
しかし触れる肩が小刻みに震えているのに気付き、それが不思議で横から顔を覗き込んだ。
「り、く…っ」
唇は弱々しく言葉を紡ぐが、揺れる瞳は未だあの男を捉えたまま。
「あっ、キミも起きたんだー。そんなに俺と会いたかったの?」
「な、誰だよアンタ!」