カタンッと音がした。
先程まで、室内にある時計の針の音だけが響いていた部屋。
その物音に気付いた由希は、重たい目を擦りもぞもぞとベッドから起き上がった。
月明かりに照らされた室内にある時計が刻む時刻を見て、まだ五分あるから大丈夫だと安心し、またベッドに潜り込もうとしてーー止まる。
窓の前に、人が立っていたのだ。
「あれ? 寝るんじゃなかったの?」
「え、あ……」
黒いマントを羽織いフードを被っているその人物は、窓の前に立ちくすくす笑っていた。
口元しか見えないその人物の、笑った時に覗いた歯は鋭く尖っており、月明かりに照らされ妖しく光っている。
「だ、誰…です、か?」
「んー? 俺の事、覚えてないの?」
「酷いなぁ」と言ったその人物は、おもむろにフードを取った。
フードから現れたのは、綺麗な腰程まである長い髪。
整った顔立ち。
瞳は――血の様に赤い。