「いやたださー、確か昔は腰位まで髪があったよなぁって思って…」
「そうだっけ?」
「なんだよ、覚えてねーの?」
「うん」
由希は肩ほどの髪に触れながら、首を傾げうーんっと唸り考える。
しかし、凌空の言う腰位まで髪があった昔の自分を、由希は全くと言っていい程覚えていなかった。
「小学低学年位だった時にさ、お前の家に遊びに行ったら、いきなり泣きながらハサミで自分の髪切ってたんだぞ? あれは流石にビビったな~」
「えー、嘘だぁ」
「嘘じゃねーよ。お前髪長いの怖いとか、長いの嫌だって言ってたみたいだぞ? これでも思い出さねーの?」
「ん゙ー…。思い出しそうで、思い出せない」
こめかみの部分をトントン叩き、目線を宙にさ迷わせ思考を巡らすが、結局何も思い出せなく、由希は笑って誤魔化した。