由希にチョップされた腹を痛そうに擦りながら画面を見て言う凌空に、「なんで?!」と、由希は驚いた声を上げた。
(まさかそっちだとは思わなかった)
「なんでって言われても…」
「だって普通、どんな困難にも一緒に立ち向かう! みたいなのが良いんじゃないの?! それに、どんなに辛い状況にも二人一緒なら大丈夫! じゃなかった?!」
「どんな偏見だよ…。それって人によるんじゃねーの?」
「えー、そう?」
「そう」
凌空の言葉に由希は途端に面白くなくなったのか、「なんだつまんない」と呟きベッドに寄り掛かった。
凌空は、由希が放り投げたコントローラーを拾い上げ、どういう訳か慣れた手付きで台詞を選択し、勝手に決定ボタンを押していた。
それにより、止まったままだったキャラクターが動き出し、声優の声が由希の耳へと届く。
その声に漸く凌空が勝手に選択肢を選んでいた事に気付いた由希は、慌てて画面を凝視する。