早くどっか行けよ、お前、キャプテンだろ。そういうと木野はへらへら笑って踵をかえした。そして、途中で振り向いて、右腕あげて、

「あの娘がリストバンドをはずさないのはー」
僕はその歌に続く歌詞を知っている。

そこまで彼女を愛していたわけではないけど、なんとなく、放課後に残る習慣がついてしまった。そうしたらリストバンドはずした木野の右手首を一瞬見てしまった。

手首のきずを隠しているからさー

ドキドキ。








あまりにも自然だった。生まれたときからついていたもんじゃないのか?ってくらい。むしろソレがない僕の方がおかしいんじゃないか?って感じるくらい。
それでもドキドキした。理由なんて聞かなかった。聞けるはずない。だってそんな、親しかったとしても、なぁ?聞けないし、まして本人に聞くなんて、なぁ。一瞬見えた時、木野は、
「バレたか!」
爆笑した。ひょうしぬけ。なんだぁ、これ。つーか、気付いてほしかったのかよ。何そんなに嬉しそうに、笑って…
「うち、菊池くんに気付いてほしかったんだよねぇ」