優はハッとして、下を向いた。
俯いている優を見つめて、その答えをじっと待っていたら、
ホームに電車が入ってきた。
優は顔を上げて、私の手を引き、いつもの手すりの前に立たせると、
その前に立ち、また俯いた。
ドアが閉まっても、まだ黙って俯いたままだったから、
そんなに私に言い難い答えなんだと、
その答えを聞くのが怖くなった。
ふたつ目の駅で停車し、ドアが閉まった時、
「あすかはさ………」
やっと優が、口を開いた。
その先の言葉を、
不安な気持ちで、いっぱいになりながら、
待った。
「俺が、茨城に行っても、
大丈夫か………?」
大丈夫………か………
そんな事を聞いてくるなんて……
まっすぐな眼差しで見つめながら言われて、
不安な気持ちが爆発してしまいそうになり、
バッと目をそらして下を向いた。
優が、遠くに行っちゃう………
どうしよう………
【離れるのがさみしいかもしれないけど、これは成海のためだよ。
茨城に行くことになったら応援してやれよ】
白石くんの言葉を思い出した。
繋いだ手をぎゅっとされて、
俯いたまま、私と優を繋ぐ手を見つめたら、
ポタポタと涙がこぼれ落ちてしまった。
ダメじゃん………
泣いたら、優を苦しめてしまう………
私は手すりから手を離し、
目を擦って涙を拭うと、
笑顔を作って顔を上げた。