放課後。
その日はピアノのレッスンの日だったから、
帰りに教室に行き、桜木先生に会った。
「あすかちゃん。
私ね、2月いっぱいで辞めることになったの」
レッスン前に先生が話し始めた。
「2月で?」
「うん。それでね、これ......」
先生は、ピアノの上から封筒を取って、
私に差し出してきた。
「3月29日の結婚式、ぜひ優くんと一緒に来てね」
差し出されたのは、結婚式の招待状だった。
「私も?行っていいの?」
先生は、かわいく微笑んだ。
「もちろん」
「ありがとう、先生」
私はそっと招待状を受け取ると、封筒を開けて、
招待状を取り出した。
成海 良
桜木 美音
お兄さん、【良】っていうんだ。
「先生、遠距離恋愛って、辛い?」
私がそう聞くと、先生は「え?」と少し驚いていた。
私は先生に、優が茨城の大学を受けるかもしれないってことを話した。
「あぁ......その大学、
優くんは、たぶん中学の頃から目指していたんじゃないかな」
「中学の頃から目指していたの?」
先生は、「うん」と頷いた。
「優くんは、小さい頃から飛び抜けて絵が上手でね、
絵で結構表彰されていて、
だから、中学の頃から、
その大学の推薦を取って、茨城で一人暮らしするって、
ご両親にそう言ってたみたい。
お母さんは、息子二人とも遠くに行っちゃうって、
とても寂しがっていたから......
特に優くんが一人暮らしするのは、
すごく心配していたの」