「日本に、ひとつだけ.......」
そうなんだ。
そこしか、ないんだ。
優はやっぱりその大学を目指しているのかな。
でも、
じゃあ部屋にあった、あの美大の本は、
なんだったんだろう。
本屋さんでも、立ち読みしていたし。
「優の部屋に、
○○○美術大学の本があったんだけど、
その大学は、どこにあるか知ってる?」
「あぁ、○美大?
それなら、うちのばあちゃんちのそばにあるけど」
「森下くんのおばあちゃんちって、どこ?」
「○市だよ。
こっからだと、そうだなぁ......
1時間もしないで着くよ。
遠山んちの駅からなら、30分ぐらいで着くんじゃん?」
○美大は、近いんだ。
「でもさ、○美大は超人気あるし、レベル高いから、難しいんじゃね?
それに、一般の大学だろ?
いくら手術したからって、
成海には厳しいんじゃないか?」
そうだよね。
確かに、だいぶ聞こえるようにはなったけど、
だからといって、ろう学校からいきなり一般の大学だと、
厳しいかもしれない。
優にとっては、配慮の行き届いた専門の大学の方が、
いろんな面でも良いのかも。
でも、
遠すぎる......
「離れるのはさみしいかもしれないけど、
これは成海のためだよ。
もし、茨城に行くってことになったら、
応援してやれよ」
白石くんの言葉が胸に突き刺さった。