「犬ぅ~子犬ぅ~」 今は、夏。夏休みの真っ最中だ。そして今俺は、犬を探している。じめじめした土の上を這うようにしている。草の中。いろんな虫がいる中で、這って歩くのは正直つらい。でもそのいるがまだ子犬で小さく、こんな腰 まであるような高さ の葉のなかに隠れているとなると、踏まないようにしないといけないし、たいへんだ。 「紅夜ぁ!居たかぁ!」「いないっ!」 衣兎は大きな岩の上に腰を下ろし、汗をTシャツで拭きながらこっちに話しかけてきたのだからなんだか腹が立つ。こっちは一度も休憩していないというのに。もともと汗かきの俺は、Tシャツがびしょびしょになり、それに砂がつき、水色が茶色くなってしまっていた。急に耳につくような声が聞こえた。 「居たぁ!」 「マジで!」 金色のしっぽが草の間からチラリと見えた。それを慌てて捕まえる。 「つかまえた!」 まだ小さいゴ-ルデンレトリバ-だった。尻尾をふりながら俺の手をぺろぺろ舐める。 「お―い、衣兎…」 「ごえも~ん!!」 「五右衛門!?」 両手でもっている子犬を俺から無理やり取り上げ、自分の手に入れ、思いっきり抱きしめる。五右衛門は俺の