「絢女、今日は部活出る?」

学校に着いて授業を受け、昼休憩。
教室のドアからひょいっと顔を出した、あの子、魅畝が言った。
「出なーい。疲れるし、帰る。」
私は即答。だって、ハアハア言ってるところなんてみっともなくて見せらんない。私のイメージガタ落ちじゃん。

「え?絢女、今日も出ないの?ここのところずっと出てないよね?先輩たちも心配してたよ。出た方がいいんじゃない?」
魅畝は心配そうな表情を浮かべている。
透き通ったガラスのような瞳が揺れている。
そういうところだよ。魅畝のせいで私は学年一目立つ存在になれないじゃん。魅畝が私より勝ってる気がして…人間、顔じゃないとは言いながらも、どうせ最後は顔が整ってる人が得するんだ。だから私はいっぱい得してきた。なのに、魅畝みたいな子がいたら得できないじゃん。

「…じゃあ、明日は出るよ。」

やる気なんて欠片もない。そう言って、この場を収めたかっただけ。

「そっか。了解!」
明るく言って、魅畝は去って行った。
魅畝は毎日部活に出てる。
私が部活サボって帰ってるときも、グラウンドの横を通ったら魅畝が走ってるのが見えるんだ。
だから余計に部活出る気にならない。
魅畝の方がもう随分タイムも上がっているだろう。そうしたら絶対比べられるから。そんなのだけは、御免。