「別れよう――」


 震える声で喉から搾り出すように僕は言った。


 きっと今までの僕の人生で、これ以上重い言葉はなかったと思う。


 「望……」


 「そんな顔しないでよ……」


 初めて見る茜の涙は、不謹慎だが綺麗だった。


 同時に、僕は初めて茜の素顔を見た気がした。


 「今度はちゃんと塩味の卵焼きが好きな人、見つけなきゃね」