懐かしい昔の話をしながら歩いていると。

「あ」

千秋が立ち止まった。

「こうちゃん、お土産物屋さん」

千秋の指差した先には、童話の中に出てきそうな、小さなログハウスのような造りの土産物屋があった。

「覗いてみる?」

「うんっ」

俺は千秋と共に、店の中に入っていった。

…店の中には、ほんのり甘い香り。

牧場があるだけあって、お土産物にはクッキーやチーズ、搾り立ての牛乳なんてのもある。

「…そういえば母さん、新鮮な牛乳はとても美味しいのよ、なんて言ってた事あったなぁ…」

俺はそう言って、牛乳のビンを一本手に取る。

重いし、持って帰るの気をつけなきゃだけど、母さんにもお土産買ってやりたいし。

「おばさんに?」

千秋が俺の顔を覗き込む。

「うん。母さんが搾り立てのは美味しいって言ってたから」

俺が言うと、何故か千秋の方が嬉しそうに微笑んだ。

「こうちゃんはお母さん思いなんだね」

そんな俺である事が嬉しいかのように、千秋はご機嫌だった。