牧場の柵沿いに続く散歩道を、二人で歩く。

千秋は、間近で見る牛の姿におっかなびっくりだ。

「こういう原っぱも久しぶりだね」

千秋が俺の顔を見て笑う。

…そう言えば、子供の頃は近所に空き地が多くて、こういう原っぱがたくさんあって。

千秋は蓮華の花で花飾りとか作ってたっけ。

「ああいうの、千秋は上手かったよな。男の子みたいなくせに」

「何よー、ひどーい」

怒ったふりをして、千秋はクスクス笑う。

「今でも作れるよ?」

千秋は足元にタンポポが咲いているのを見つけて摘もうとして。

「…やっぱりやめた」

スッと立ち上がった。

「作り方忘れたんだろー?」

からかう俺に。

「違うよ」

彼女はふくれっ面を見せる。

「せっかく咲いてるのに、摘んだら可哀相じゃない」

「……」

ああ…そうだった…。

千秋って、根はこういう優しい子だったな。

子供の頃も、近所に迷い込んできた子猫を何とかしてやりたくて、家からミルクを持ち出して飲ませたり、飼わせて欲しいってお母さんに頼み込んだりしてたっけ…。