その肝心なトモはというと、寝坊してやっと起きたばかりで、まだ準備が出来ていないらしい。

千秋のお父さんとお母さんに急かされながら、ドタバタと走り回っている。

「トモはいっつもギリギリまで寝てるから…」

呆れたように、千秋が言った。

…いつの間にか俺の隣に立っている。

お父さんもトモの準備の方に行ってしまったので、玄関には俺と千秋の二人きり…。

ちょっと、緊張するかも…。

なんとなくそわそわしていると。

「こうちゃん」

「ふぇっ!?」

急に声をかけられて、変な声を上げてしまった。

「いきなり誘ったりして、迷惑じゃなかった?」

「そんな事ないよ、俺も退屈してたし」

迷惑なんて全然!と手を振る。

「そっか…よかった」

微笑みながら、千秋はお父さんの方を見た。

「お父さんがね、すごい心配してたの。こうちゃんの事」

「おじさんが?」

「うん」

千秋は頷く。

「こうちゃんとこのお父さん…いなくなったでしょ?だからこうちゃん、強がってるけど寂しいんじゃないかって。頼れる人がいなくて、辛いんじゃないかって。だから、お父さんの代わりに色んなとこ遊びに連れてってあげたいって」

「……」

俺は千秋のお父さんの方を見る。

俺の事…そんな風に心配してくれてたんだ…おじさん…。