仲睦まじい二人の姉弟喧嘩は微笑ましいが、今にマジ喧嘩に発展しそうな雰囲気だ。

「あのさ」

そろそろ取っ組み合いになろうかという直前で、俺は二人に声をかけた。

「お邪魔じゃなければ、俺も一緒に行って…いいか?」

「じゃ、邪魔だなんて!」

千秋は手首がちぎれそうなほどブンブンと顔の前で振る。

「きてきて!大勢の方が楽しいし!お父さんもこうちゃんに久しぶりに会いたがってたし!」

「姉ちゃんも恋焦がれてたし」

ニヒヒッと笑って言ったトモが、千秋に思いっきり足の甲を踏まれた。

また小競り合いを始める二人。

おいおい…。

「えと…それでいつ行くんだ?」

「え?ああ、来週の日曜日なんだけど…」

トモのほっぺをつねりながら千秋が言った。

幸いにして、高校生活の準備はもう整って、暇を持て余している。

というか、千秋との外出だ。

暇なんて、無理矢理にでも作る。

でも。

「ふぅん、そっか、わかった、空けとくよ」

楽しみにしてます!なんて正直に言えるほど、俺は素直じゃない。

時間があるから行ってもいいかな、みたいな態度で、俺は頬の緩むのを懸命にこらえていた。