恵一はポツリとそう言った。

そのときの顔は本当に優しくて、

すごい大切な場所なんだなって思った。

恵「俺には、兄がいたんです。

  笑うとかっこよくて、

  自慢の兄が。

  俺は兄が大好きでした…」

私は、恵一の一言に首を傾げた。

おかしい。だって…

なんで、“いた”とか、“でした”なの?

顔にでていたんだろう。

恵一は

恵「…さすがですね。気づきましたか?」

といった。

『…うん。なんで…過去形なの?』

問いかけた声は震えていた。

なんだか、わかってしまったような気がした。

過去形で言った、その意味を。