俺が風呂から上がると櫻井さんが入れ違いで、浴室へと入っていった。


喉が乾いて冷蔵庫を覗くとミネラルウォーターが見えて、それを手にベッドに腰かけた。


半分ほど飲み干して一呼吸。


このあとは、きっとあの人が俺を抱くだろう。


きっとそうだ。


じゃないと、こんなに良くしてくれるはずがない。

結局、浴槽の中で出た答えはこれだった。


どんな要求をされても、俺は応えるだけ。

引き取ってもらったのだから、当然のことだ。


大丈夫、今までだってそうして生きてきたんだ。

大丈夫、今回だって同じこと。



ぎゅっとペットボトルを握りしめたのと同時に、ベッドが軋んだ。


顔をあげれば、上半身には何も身に付けていない櫻井さんが腰かけていた。


「それ、寄越せ。」


それと言われた手の中のミネラルウォーターを渡す。


あ、髪が少し濡れてる。

そう思ったら、無意識のうちに櫻井さんの髪に触れていた。


櫻井さんは少し驚いたように俺を見て、俺はその視線で我に返った。


「あ……ごめんなさい。」