「何かって?
正樹くんってば
そんな 頻繁に
私に何かあるわけないでしょ~」

笑い飛ばすように
言い返しながら
髪に手をかけようとする自分の手を隠した。

都合が悪くなると
つい、自分の髪を触ろうとしてしまう。

正樹くんに指摘されるまで
自分でも気づかなかったけれど・・・

前は これでウソを見抜かれてしまったから、同じ失敗は もうしない。

「・・・ならいいけど
春菜ちゃん
さっき どこ行ってたの?」

「さっき?」

「俺が ちょうど
家の前の道路走ってたら
春菜ちゃんが
すごいスピードで
玄関の中に走って入ってったからさ」


そこから見られてたって
最悪じゃん・・・


「ま・・・・・」

「ま?」

「そう、マラソン!
ほら、私 最近食べて寝ての繰り返しだったからさ~
ブクブク太っちゃって。
だから 運動しなくちゃなぁ・・って。
そしたら、
酸欠みたいになって
立ちくらみしたってわけ」

「へぇ・・・・・」