その日の夜、8時前に
輝樹からの電話が鳴った。

「春菜?今から行くから
外に出とけよ?
あと・・・3分くらい」

3分って・・・・
せめて 数十分前に電話してくれたら
余裕ある準備できるのに・・・

大慌てで 外に出ると

もうすでに車が・・・

助手席に乗り込むと

少し考えた様子で
外を見つめていた。

「なぁ・・・・
俺さ、今思い出したんだけど・・」

深刻な表情で
私の方を見ながら 話し始めた。

「何を・・・?」

何か 重要な事なんだろうか・・・

「今日DVD返却日だ。
つーか、観てねぇし・・・」

「・・・は?」

「は?じゃねぇよ。
DVDだよ、DVD」

DVD・・・?

「あーマジ最悪・・・・
観てねぇし・・・・
今 8時だろ・・・
今から観れば間に合うか・・
たしか2時間くらいだったような・・
でも2本あるんだよな・・・」

1人でブツブツ言いながら
1人で納得してるけど・・・・

せっかく会ったのに
帰るって事・・?

「あ・・・・それなら
帰って観れば
間に合うよ。
私なら 平気だし・・」

本当はイヤだけど・・・
せっかく会えたのに・・・

「だな。もったいねぇしな」

外に出ようと
ドアノブに手をかけた瞬間
車が走り始めた。