「これでよかったのだろうな」どこかで誰かが言った。
「当たり前だ」もう一人の誰かが答えた。

「我々は『ここでセーブしたい』と強く念じると、『セーブしますか』と頭のなかで強く響く効能のある薬品を開発した」
「だがそれだけだ。セーブポイントなんて、存在しない。ゲームじゃあるまいし。『セーブポイントまでもどる』と言葉にすると、副作用で死に至る薬だ」
「だがあの人間はそれを信じた」
「その通り。セーブがあると信じたから、何をするにも思い切りが良かった。まさか、あの薬にこんな使い道があるとはね。あの役者の女の子の演技も、なかなか真にせまっていたようだ」
「一度ぐらい、セーブポイントまで戻ろうとしてみなかったのだろうか」
「していたら、そこで死んでいるからな」
「やり直しがきくと思い込むということで、結局はやり直さなくてもよいぐらい、後悔しない人生を送れるというわけ、か・・・」

誰かは黙って何かを考えているようだった。

「おい、どうした。そろそろ我々は、我々の星に帰らなければならない。実験の結果を報告するのだ」
「わかっている、だが・・・」

だが、何か大事なことを見落としているような気がするのだ。

***

地球からは、偉大な英雄が死んだ瞬間、大きな流れ星がひとつ飛び出して、すぐに消えたように見えた。