温厚というか、馬鹿というか。 あいつが一度だけ、泣いた。 その現場を見たわけじゃない。 ただ、我慢するような、すすり泣くような声を聞いただけ。 背を向けられてたから、多分あいつは今でも後ろに私がいたことに、気づいていない。 そのときの私の気持ちも。 実を言うと、その幼馴染みにはいつも暴言やら我が儘ばかりを言っていた。 唯一本音を言える相手だったし。 昔から一緒にいるし。 だけどあいつは、なかなか本音を言わない。