「顔上げてくれないと、キスできないんだけど」
大翔君の口からまさかこんな言葉が出てくるなんて思っていなかった私は、驚いてすかさず顔を上げる。
「えっ……?」
後頭部に手を回されて、そのまま瞬きする間もなく自然に引き寄せられると、唇に柔らかな感触が広がる。
「……んっ」
小さくリップ音がして触れ合っていた唇がゆっくりと離れると、目を開いた大翔君と至近距離で目がバッチリと合う。
「まりや、好きだよ」
予想していなかった展開の連続に頭の中は真っ白。
大翔君が私を好き……?
これって現実?
それとも夢?
目の前で起こってることが未だに信じられなくて、右手で自分の頬をプニッとつまんでみる。
「……何やってんの?」
「いひゃい……夢じゃ……ない?」
頬に走った痛みに、これが夢じゃないことをやっと理解することができた。
大翔君といえば、いきなり意味不明な行動を目の前でされて、珍しいものでも見るようなそんな顔をしている。