男の人の力がこんなに強いなんて知らなかった。
怖いっていう感情が初めて生まれる。
それを自覚すると、緩みきっていた涙腺からは崩壊したように涙が溢れだす。
「……っ。同居しなくてもいいなんて……嘘だよ……。
本当はずっと……一緒にいてほしい……。
でも、大翔君の心の中にはずっと想ってる人がいて、それを聞いてすごくショックだった。
私はただの幼なじみで、他に好きな人がいる大翔君にこれ以上迷惑かけちゃいけないって……そんな大切に想ってる人に他の女の子と同居してるなんて知られたら、相手の人に悪いと思うし。
わがまま言ってこれ以上甘えることなんてできないから……だから……っ」
自分でも何を言ってるのかよくわからなかった。
でも言いながら、やっぱり大翔君の側にいたいって強く思った。
こんな願い叶うはずないのに、私ってどこまで欲張りなんだろう。
そう思うと自分の欲深さに余計泣けてきて、何も言えなくなってしまった。
「だから……同居しなくていいなんて言ったのか?」
返事の代わりに頷くことしかできない。
涙で濡れた視界では、大翔君が今どんな顔してるかハッキリとはわからなかったけど、さっきの冷たい声色はもうなくなっていて、それに余計安心して涙が出てきた。
こんなちょっとしたことが嬉しいと感じるなんて、私はやっぱり単純なんだ。