「何だよ……あれ。ヒロでも女を泣かせることあるんだね〜。

新発見かも」



「うるせーな。今日は大人しく寝ろよ。いいな?」



「ハイハイ。居候らしく大人しくしてますよー。て、俺はどこで寝ればいいわけ……」



2階に上がる途中で聞こえてきた2人の会話も気にならないくらい、心は動揺していた。



自分の部屋に戻ると、そのままベッドに体を預ける。



大事なことなのに、ちゃんと言えなかった……。



こんなの私のわがままだよ、完全に。



自分の気持ちを整理しようと、ゆっくり深呼吸して息を吐き出した時だった。



——コンコン。



ドアをノックする音。



思わずドアの方を見てみたけど、ノックした相手が大翔君なのか谷山君なのかわからない。



返事をするべきかどうか迷っていたら、ドアの向こう側から声をかけられる。



「まりや、入るぞ」



聞き慣れた声がして、返す間もなくドアを開けて大翔君が入ってくる。



入ってきた大翔君の顔は少し怒ってるようにも見えて、声をかけるのをためらってしまった。