その時何かよくわからない穴から光が漏れ出した気がした。




もしかしたらこれは黄泉の国への入り口みたいなやつなのかもしれない。

こんなところで汚されて散々な姿になってから死ぬよりは綺麗なままで死にたい。



もしかしたらこれは地獄につながってんのかもしれないし天国かもっとパラレルなものかもしれない。

でもきっとここでこうしてても何も変わらない。

ここでこんな穴に遭遇するのもきっと何かの縁だと思う。


心に決心を決めると目の前の男たちを少し睨むと穴の中に身を投げた。













ピチャン・・・・

パシャン・・・





暗い・・・。



肌に触れる水みたいなものが何だか冷たい。



何もない空間みたいで水面に滴が落ちる音がどこまでも響く。


目は開いてないけど近くを光の玉みたいなものがゆらゆらただよっている気がする・・・。





蛍かな?









遠くから静かに水を蹴る音が聞こえる・・・。

これは足音?




その足音がどんどん近づいてきて私の前で止まる。











「やっと・・・、ようやく会えたな。今度はもう、離さへんからな」







男の細い指が私の髪をなでながら飄々と話しかけてくる。



ふいに香る何かの淡い香りが優しく包み込む。

どこか懐かしい気がする・・・。
でもわからない。





あなたは誰?








「ほな、いこか」





響く優しい声。

私の額に何かやわらかくて温かいものが静かに触れると謎の男は私を片手に抱くと歩き出した。



壊れそうなものを扱うように大事そうに抱え込んだ。

今私はこの人にキスされたのかな?

あれは・・・やっぱりキスだったとおもう。そう思うと何だか鼓動が早くなって息をするのが苦しくなる。


ああ、何してんだ私。
ほんと馬鹿みたいとため息が出そうだ。




男の人は和服を着ているらしく布ずれの音がする。


でも歩くたび聞こえるその音はとても軽やかで多分すごくきれいというか美しいんだと思う。





ますます謎になってくる・・・・


こんな人私は絶対に知らないのに触れられると何だか安心する・・・。




一体、何?



「ほな、ここで一旦さいならや」
辺りは光でつつまれた。