「そんなに良いもんじゃねぇよ。 技、外されると痛いし」
「でも楽しいんでしょ?」
「……」
黙って照れくさそうにしている佐伯君。
そんな佐伯君と見てると、自然と笑いが込み上げてくる。
「…あははっ」
「何だよ、気持ち悪ぃな」
「だって…照れてるじゃん」
「誰が」
ギロッと私を睨む。
ひっ!!
不機嫌なのが余計不機嫌にしてしまった。
すると、佐伯君が急に立ち上がった。
「んじゃ。 休憩、もう終わりだから行くわ」
「あっ、うん。ファイトです」
応援する時、先輩には“ファイトです”、同級生や後輩には“ファイト”と言うのが深町第一中学校剣道部の決まりだ。
「頑張り過ぎて、倒れんなよ」
佐伯君はそう一言残して、練習に戻って行った。
このあとは、空になったボトルを片付けて、練習で時間を計る役をする。
“頑張り過ぎて倒れんなよ”。