だからと言って、私が入ったからって問題が解決するとは思えないけど、でも……。


何も力にならないとしても、取り敢えず行かなきゃ。


そう思った私が席を立とうとした、その時、



「荒川」



右の方から、私を呼ぶ声が聞こえた。


……誰?


いきなりだったし、聞きなれない声だったから最初そう思ったのだが、私の右にいる人は一人しかいないことに気づく。



「……何?」



私は、みんなに爽くんと呼ばれていたその人に話しかけた。


ところが彼は何も答えずに立ち上がると、教室全体に向かって



「うるさいから静かに」



と言った。


私はなんとなく動けないでいる。


男子生徒の何人かは、立ち上がった爽くんに向かって質問を浴びせかけた。



「なぁ爽くん今どうなってんの?」


「何で俺ら移動させられてんの?」



彼は何故か私の方をちらりと見てから、



「朝配られた紙には荒川の名前が載って無かったんだけど、荒川も一組なんだって」



とそれだけまず言って、みんながその言葉を理解するまでの間を置く。


反応は様々だった。
もう聞いたと訳知り顔の者、ふーん、と初めて聞いたように納得している者。


やがて、



「……でも、なんで移動するってことになってんの?」


という問い掛けがなされた。