「どこって?」


「え、志望校」


「あー……。実はまだ決めてないんだ」


「そうなの?」



意外だ。
翠はしっかりしているから、そう言う事かけては早くから決めていそうなのに。



「一応目安はつけてるんだけどまだ絞ってはいない。……遅いかな?」


「まだ大丈夫じゃない?多分決めてる人少ないと思うよ」



少なくとも、この教室の人はそんな先の事まで考えていなさそうな気がする。



「それに、翠だったら基本どこでも行けるだろうし」


「いやそれはないよ」


「大ありだよ。……あれ、でも行きたい所があるって前に言ってなかった?」


「あー……。あれは、志望校って言うよりただの希望?」


「どこどこ?」


「……じゃあ、あんまり言わないでね」


「うん。もちろん」


「あのね……」



翠が私の耳に顔を寄せて来る。
志望校の名前を囁くのだろうか。


私も耳を彼女のほうに寄せ、志望校を囁いてくるまさにそのとき、


ガラガラガラッ


と大きな音をたてて扉が開いた。


その扉の近くにいた私達は思わずその体勢のまま固まる。


私達の視線が集まるなか、



「おはようございます」



と言いながら竹内先生が入ってきた。


その竹内先生の後ろから、私の見たことのない男子生徒が入ってきた。