ってか………、めちゃくちゃ美人じゃねぇか…。
漆黒の髪はストレートに腰辺りまで伸び、二重のはっきりとした目は、吸い込まれそうなくらい澄んでいる。
身長もそれなりで、スタイルも良いと言えるんだろう。
真の言うこともたまにはアテになるな……。
教室の全員が静かに転校生の次の言葉を待った。
「……橘 千尋です。
短い間ですが、よろしく」
…………短い間……?
また引っ越すことが決まっているのだろうか。
「短い間」というその言葉に引っ掛かりを感じた俺だったが、
まわりはそんなことを気にも止めずに騒ぎ立てる。
「静かに!」
先生の強めの一喝でざわつきも収まった。
「とにかく、橘の席はあそこな」
先生はそう言って俺の隣の空席を指差す。
おいおい………。
後ろの席の空いてる席に当たり前のごとく放り込むのやめろよ。漫画じゃあるまいし。
多少の恨みを込め、眉を潜めて先生を見る
このまま転校生のお世話係とかごめんだからな。
なったら本当担任恨むわ。
俺が頭を悩ませていると
「…わかりました」
転校生、―――橘 千尋は先生に一つ返事を返し、すたすたとこちらへ来て隣の席に座った。
「…………よろしく」
こういうときは何か言うべきなのだろうと思い、隣に座る橘 千尋に結構な間の後に一言だけ話しかけた。
「…よろしく」
橘 千尋は何の感情の変化も無い声でそう俺に返した。