「…まあ無事に高二に上がれたから良いんだけどさー」


俺の態度に不機嫌そうにしながら下足を脱いで上靴を履く。


「またよろしくな。一心」

「…おう」

合図のようにお互いの腕をトンと合わせ微笑する。


真とはまたクラスが一緒なのでそのまま2-Aの教室に入っていく。


「そういや一心。
何か今日転校生来るらしいぞ」


真の話に教科書諸々を出していた手を少し止める。



「……へえ。んで?」

「んでって……。
噂によりゃあ美人だとさ」

「アテになんねぇな」


そんな根も葉もない噂に興味が起きるわけがねぇ。



「信じる信じないは勝手だけどな。まあ期待しとけよ」


ニッと歯を見せて笑う真に小さな溜め息をついて教科書をしまう。


そんなものを信じるほど俺は馬鹿じゃないし、ましてや美人だとしたら何なんだ。

一目惚れでもしろって言うのか。



―――と、

HRまでの時間は、そんなことをぼんやりと考えていた。