「おい一心。
俺らもついに高二だな!」
歓喜を隠さず子供みたいに隣ではしゃぐ俺の幼馴染みの松原 真(マツバラ マコト)。
「そんな嬉しい事か?
当たり前だろ」
「いやいや。お前は普通な成績で普通に単位とって普通に上がれると思ってる普通な顔の野郎だから良いけどなぁ、」
「顔は関係ねぇだろうが」
「それは冗談」
けらけらと愉快そうに笑う真に眉を潜める。
お前に言われなくても俺が何処にでもいる高二の平々凡々な男子ってことは俺が一番知ってるんだ。
つか改めてお前に言われると腹立つ。
心の中の不満を顔に出すと
「そんなあからさまな顔するなよ。悪かったって」
と背中をぽんぽんと叩いて俺を宥める。
「俺は馬鹿だから単位取んのも一苦労だったんだって」
溜め息混じりに肩を竦める真に「難儀なこった」と一言突き放すように言って生徒玄関に入る。