「はる、お待たせ」
「……うん」

時計を見ると、時刻は2時13分。
待ち合わせから13分も過ぎている。

「…こた。私に何か言うことは?」

「はる」こと柴崎春は、縮こまる「こた」こと「鏑木小太郎」を睨めつけた。身長は流石に小太郎に負けるが、迫力では春が圧倒的だった。

「…ごめんなさいッ」
「わかればよろしい。で、何があったの?」

勢いよく頭を下げたのを見て、春は怒った顔をいつもの笑顔にかえた。それを見て安心したらしい小太郎は、春の手を握った。

「服、選んでた」
「は?何を今更…たかがショッピングじゃんか。そんな服選ばなくたって」

春と小太郎は幼馴染の腐れ縁。
そこから気が付いたら恋人にフェードアウトしていた。お互いそれでもまぁいいか、という流れで今に至る。

服も何ももう二十年近くも一緒に過ごしているのだ。今更そんな所にこだわらなくったって。

呆れた顔で小太郎を見ると、小太郎は照れ臭そうにふわりと笑った。

「だってはるとのデートだもん。折角ならかっこいい俺を見て欲しいじゃん」


ずるい。
小太郎はずるい。

悔しいけど、かっこいい。