「っ…じゃあ…、幽霊か?」

『そんなに怯えんでも、わらわはそちに何もせんわ。』

そう言われて初めて自分の体が小刻みに震えていることに気付いた。

『人間でないことは確かだが、幽霊でもない。』

「……。」

意味分かんねえ。

『精霊、と言えば一番近いかの…。』

「……精霊?」

『そちも紺碧池を見に来たのか?人間は何故そんなにも紺碧池を見たがるのじゃ?』

「……俺は、見に来たわけじゃない。紺碧池のあたりで変な声がするからって、パトロールを頼まれたんだ。」

『ぱとろぉる?…何じゃそれは。…まぁよい。ところでそち、その怪我、どうするつもりじゃ?』

怪我?

怪我なんてどこにも…。

「っ…。」

立ち上がろうとした時、膝に鋭い痛みが走った。

膝を見ると、先ほど擦りむいたのか、大きな傷が出来ていた。