『おい、聞こえておろう!!!そちらは崖じゃ!!』

ワントーン大きいその声に驚いて足を止めると、一気に辺りの霧が晴れた。

「っ!!」

あともう一歩先は今にも崩れそうな岩場だった。

『…そちも皆の二の前になるところだったな。』

「……お前…は、誰だ。」

振り向かずに言う。

幽霊なんていないと思ってたけど、

本当に声がする。

幽霊じゃないとしたら、この声は何だ。普通に人がいるだけか。

でも一切の人気がしない。

ぞくりと背筋が冷たくなる。

俺は思い切り来た道を全速力で逆走した。

だが、足場の悪さが影響してすぐに転んだ。

急いで立ち上がろうとしたけど、足に力が入らない。

…幽霊なんていないと思ってたのに、情けない。

体に力が入らない。

「…人じゃないことは、確かじゃのう…。」

そう言ってその声はくすくすと笑う。