学校を出て、裏山につながる石階段を懐中電灯で照らしながら上がる。

確かにところどころ苔むしていて薄暗く空気がひんやりしているため、

『いかにも出そう』な雰囲気ではある。

が、実際幽霊なんているわけないっつーの。

確かに森本が言う通り足場がかなり悪かった。

ぬかるんでいて、気を抜くと足を滑らせそうだ。

…いっそ裏山を立ち入り禁止にすりゃあいいのに。

ひた、ひた、という自分の足音だけ響く。

そして、途中の分かれ道を矢印に『紺碧池』と書かれている方に曲がった。その時、透き通った女の人の声があたりに響いた。

『お前、そちらは危ないぞ。』

「…は?」

後ろを振り返ったが、誰もいない。

幻聴か?

再び足をすすめる。

『そちらは危ないというに。』

聞こえない、聞こえない、何も聞こえない。

早足で道を進む。