「恐怖心からくる幻聴ですよぉ~。全く、みんなして怖がりなんだから。あ、佐伯は違うか。」

「ああ…俺は小さい頃から幽霊とか信じてこなかったから。」

俺はそう言うと、

「じゃ、行ってくるわ。…てか、もう暗いじゃん。やべえ。急ぐ。」

と部室のドアを開けた。

「おぅ、頼むねえ。」

寺内の声がしたが、俺は振り向かずに廊下を歩き出した。

「…はぁ。」

軽くため息をついて、廊下を歩く。

『碧姫伝説』とはこの地域に伝えられる昔話のようなもので、

悪い予言をした巫女が大名の怒りに触れ殺されるという話だ。

その巫女が沈められたのがこの学校の裏山にある『紺碧池』だという伝説があり、

その伝説に誘われてか毎年何人もの人がその池を見に行き、

足を滑らせ溺れ死んだりしているため、いつの間にか心霊スポットになっている。

足滑らせて死ぬとか、そんなのただの不注意じゃん。