「…あぁ、どうしても夜になるとこの目になりやすくての…。わらわも不気味だと思うのじゃが…。」
女の人が目を両手でこすった。
すると、女の人の目が人間の物になった。
ぱっちりとした大きな猫目。
「そなたが喋っている間に傷口が塞がったぞ。」
俺は自分の膝を見た。
傷どころか、傷跡すら見当たらない。
「見事なものじゃろう?」
「…な…。」
「さぁ、傷の治療は終わりじゃ。…お前の中のわらわに関わる記憶全部、消してやろう。額をこちらに向けよ。」
「…あのさ。」
「何じゃ。」
女の人が首をかしげる。
「傷…直してくれて、ありがとう。」
「……ありがとう?……現代の言葉はよう分からぬわ。」
「…は?『ありがとう』、知らないのかよ。」
「…知らぬ。何じゃその『ありがとう』というのは。」
「…人に感謝の気持ちを伝える言葉。」
「…感謝…か、ふむ。」