「…待たせたか?」

手には重箱のようなものを抱えている。

「…いや、別に。」

「…寒いのか?顔が青い。」

いやそれは寒いだけじゃないと思う。まだ若干、アンタが怖いよ。

俺は心の中で呟いた。

「だから、わらわに隠し事は通用せんと言ったはずだが?」

「…ああ…。」

丸聞こえだったか。そっか、心が読めるんだっけ。

「べつに、取って食おうなんて考えておらぬ。そなたなど、食いとう無いわ。」

「食べられたくもないよ。」

「よう喋る男よのぉ…。」

女の人は、手に抱えていた重箱を開けた。

その中には小さな壺があって、中には白いクリーム状のようなものが入っていた。

「安心せい。先程も言ったが、傷の治療が終われば普通に家に返してやるし、

そなたが望むなら、わらわと過ごした時間、全て忘れさせてやる。

…だからわらわをあまり怖がるな、もっと怖がらせたくなるであろう。」

「…な。」

さりげにドS発言。

「冗談だ。」

女の人がころころと鈴のように綺麗な笑い声を上げた。