麗斗は何も言わなかった。


何も言わず、その場を動かずにいた。


私もそれ以上何も言えず、ただ時間だけが流れる。


雨は止むどころか、さっきより強くなっているように感じた。


「なぁ…?」


それから幾らか時が経ったとき、強い雨の音に紛れて麗斗の声が聞こえた。


「いい加減、場所移さない?」


「…」


「寒し、雨も強くなってきたし」


そんなこと言われたって、足が痛くて立てない。


「俺の家、来ない?」


だから麗斗だけ行っていいよ、そう言おうとした時彼は予想外の言葉を口にした。


「えっ…?」


私は彼の言葉にただ驚いた。


「俺の家ここから近いし。特に意味はないから…」


ここから自分の家に帰るには電車に乗らなくちゃいけない。


この足で駅まで歩いて電車に乗るなんて無理だ。


でも、じゃあ麗斗の家に行く?


それは嫌だ…。


一時でもあんなに気持ちがぐちゃぐちゃになるのに、一日近く一緒にいるなんてできっこない。