どれだけ走ったか…いつもの道なのに、今日は違って見える。
月明かりがあったせいか空は明るくて…惨めなボクを照らす。

「あら……アリア?」

ああ…今一番聞きたくない声だ。

「こんな夜中にどこ行く気よ。夜遊びしていいのは高校生からなんだからね」

エマだった。
赤い自転車に跨がって、キンと高い声が響く。

「アリア?アンタ靴履いてないじゃない!何やってんのよォも~」

「………うん。いいんだ、もう…」

「いいって何よ!ホントバカなんだから」


ゴメン…。けど…何もかもどうでもいい。



生暖かい風が顔を撫でる。
急に流れ出した風に、海も森も大きくざわめき始めた。

気持ち悪い…。生臭い風は螺旋を描き、ボクらを翻弄していく。

「ちょっと~!何なのよこの風はっ!」

「エマ、大丈夫?」

身動きも取れないそんな中、ボクはソレの存在に気付いた。

風に遊ばれるボクらをじっと見詰める一人の男。

瞳は赤く濁り、それと同じ髪の色。忽然と現れたその男は仕切に何か言っているが、強風で何も聞こえない。




 ……………いや。



本当は聞こえていたのだ。耳ではなくココロの中で。




男は邪悪な笑みを張り付け、呪いの言葉を口にした。







 ─ ミ  ツ  ケ  タ ─