「ま、食えないなら無理して食う事もねーだろ。食えるもん食えてりゃ問題ねーよ」


充さんが、私の頭を軽く小突いた。


それだけでも、少しだけ心がほわんと温かくなる。


「だけど困ったね。宏樹さんがね、紗凪ちゃんの歓迎会をやりたいって言ってたけど、焼き肉屋とか居酒屋なんて絶対無理そうだよね」


……居酒屋はフツーにアウトだと思います、紫野さん。


「体を動かす系は?カラオケとかボーリングとかならいんじゃね?」


えー。ボーリングは別に良いけど、体格差があるんだもん。スコアに差が出るじゃんかー。


もうネットカフェでも良いんだけど。歓迎会。



……って、ネカフェで歓迎会はあり得ないか。


「そうだね。宏樹さん達にはそう言ってみるよ。遥斗くんが、優子さんや賄いさん達も呼ぶって言ってたから大丈夫でしょ?」


紫野さんが私に聞いてきたから、こくりと頷いた。



「……下手かも知れないけど、ボーリングとかカラオケなら……」

「じゃあ、そう伝えておくよ。あと、晩御飯は食べたら食器を部屋の外に出しといて。後で僕が運んでおくから」


紫野さんにここまで言って貰えるなんて、私ってばなんて恵まれてるんだろ。



紫野さんや充さんだけじゃなくて、一さんや宏樹さんも、私の事を気にかけてくれているんだ。



それを思うと、今度は嬉しい涙がぽろぽろと頬を伝って落ちてくる。



「……あり、がとっ、ございますっ…!」



再びしゃくりあげながら充さんと紫野さんにお礼を言うと、二人は私の頭をくしゃくしゃにして部屋を出ていった。