残されたのは、紫野さんと私。



「……紗凪ちゃん、翔に何をされたのか、話せる?」



紫野さんは限りなく優しい声で聞いてくれた。


紫野さんの声に安心したのか、まだしゃくりあげながらだったけど……、赤間君に無理矢理キスされたことを、説明する事ができた。


それと、私と赤間君が、幼稚園時代によく遊んでいたらしい事も。


全部を聞き終えた紫野さんは溜め息をついて、私の手を優しく、ぽん、と一つ叩いた。



「……今日はもう紗凪ちゃんは何も考えなくて良いからさ、部屋で休んでて。充と一緒に晩御飯持ってくるからね」

「あり…がと、ござ…います…」


まだ嗚咽を漏らす私の頭を一撫でして、紫野さんは立ち上がった。



「それとね、僕か充以外の寮生が訪ねて来ても、絶対に扉は開けないで。もう懲りたでしょ?」


滅茶苦茶懲りました!!!!


こっくりと頷いて、扉を閉めた紫野さんを見送った。